ウイスキーと語る

育てた作物でウイスキーを飲みたい。そんな願いから生まれたブログです。

四人の泥棒の酢

WHOによると、『布マスクには新型コロナを予防する効果がほとんどない』ということですが、それで思い出したのが「四人の泥棒の酢」です。わたしが庭にハーブを植えるきっかけになった話です。何かの参考になればと思って書きます。

人類最大の敵とも言われたペストは、14世紀の大流行で45,000人が亡くなったと推計されています。人獣共通感染症でネズミを媒介することもあり、ヒトーヒトの飛沫感染もします。治療しなかった場合、致死率は60~90%。治療しても30~60%です。当時は治療薬がなく、医療用のマスクも、防御服もない時代です。そこで暗躍したのが「魔女」です。ウィッチの語源は「賢い女性」で、今でいう薬剤師です。魔女が乗っているのはホウキではなく、ハーブの束です。魔女たちは豊富な薬草の知識を武器に患者の治療にあたりました。

しかし人々は疑念を抱きました。なぜ魔女たちはペストに感染しないのか。

おそらく、その答えが分かったのは17世紀はじめ、南フランスでペストが大流行したときです。ペストで死んだ人の家に盗みに入る四人組が現れました。盗みは悪いことですが、そんなことをすれば感染してしまいそうなものなのに、彼らは感染しません。結局は捕らえられ、彼らの防御術が公開されることになりました。泥棒らはハーブを漬けた酢を体中に塗りつけていたのです。

具体的にはローズマリー、セージ、タイム、ラベンダーを一週間ほどワインビネガーに漬け込んでエキスを抽出した酢です。もともとハーブは伝染病に効くと信じられていました。現在では科学的にも証明されています。ウイルスは酢の中では数十分しか生きられず、ハーブには瞬殺されてしまいます。この酢は『四人の泥棒の酢』の名で大量生産され、南仏はペストの封じ込めに成功しました。それ以後も大流行はなく、19世紀末には北里柴三郎によって原因菌がつきとめられて、人類はペストに勝利しました。

わたしは数年前にこの話を知って、ローズマリー、セージ、タイム、オレガノ、ペパーミントなどのハーブを植えました。今は株が大きくなっています。虫除け効果も強く、たまにしか着ない礼服のポケットに入れておくと虫に喰われません。欧州の家には網戸がないため、窓辺に鉢植えのハーブを置いたり、吊りしたりするようです。畑にハーブがあると虫が少なくなります。

四人の泥棒の酢を布製マスクにスプレーすれば、新型コロナは体内に侵入できない可能性が高いと思います。布マスクにハーブポケットを作って、ドライハーブを仕込んでおけば、呼吸の度に口に爽やかな香りが広がりそうです。当時のペスト医師は香料のフィルターを通して呼吸をしていたといいます。

その後四人の泥棒は、この酢のレシピと引き換えに無罪放免となりました。

写真はセージとローズマリーの花です。

セージの花

ローズマリー